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百人一首(神丘教室)

破田野です。

今日は百人一首の日だそうです。

 

今から約800年前のこの日、藤原定家が『小倉百人一首』を完成させたといわれています。

 

百人一首といえば、「きれいな着物を着て、静かにカッコいい歌をよみ合う、優雅でマジメな人たち」をイメージする人が多いのではないでしょうか。

 

 

……ですが、そうとも限りません。

 

 

彼らの恋愛が書かれた日記や物語を今の言葉でじっくり読み解いていくと、そこにあるのは優雅さのカケラもない、「大爆死プロポーズ」の数々。好きな相手を振り向かせようと必死になりすぎて、完全にから回りした黒歴史がゴロゴロ転がっているのです。

 

今回は千年前の有名人たちがやらかした、現代まで語り継がれる「平安貴族の爆笑プロポーズ失敗談」を3つご紹介します。

 

 

読めば古典のイメージが変わる(?)彼らの残念な空回りっぷりをどうぞ。

 

 

 

まずは、1人目。平安時代のプロポーズといえば、美しい和歌を作って好きな女性に送るのがルールです。歌のセンスが良ければ付き合えるし、下手ならフラれる厳しい世界です。

 

そこで、表現をストレートに受け止めすぎて大失敗したのが、平安時代のイケメン貴族・藤原実方(ふじわらのさねかた)です。

 

彼はかなりモテる男でしたが、ある女性にこんな歌を送りました。

「君のことを考えると、僕の心は山でもえる草のように、メラメラと焦げてしまいそうだ!」

 

今風にいえば「君への愛が俺のハートを焦がしているゼ!」という熱いメッセージです。ここまでは良かった。問題は、彼が「演出しすぎた」ことにあります。

 

実方は「言葉だけじゃ足りない!目に見える形でこのもえる情熱を伝えなきゃ!」と、とんでもないことを思いつきます。なんと、歌をそえた手紙と一緒に、本物の「燃える炭火」を箱に詰めて女性の家に送りつけたのです。

 

届けられた女性は大パニックです。
ドアを開けたら、ラブレターと一緒にメラメラ燃えるリアルな炭火。ロマンチックでも何でもありません。ただの火事の一歩手前、不審物です。

女性はドン引きし、すぐにシャッターを閉めました。モテ男が物理的に「リアル炎上」を仕掛けてフラれるという、教科書には絶対に載せられない失敗談です。

続いては、日本文学の中で一番有名な「あともう少しで大失敗した男」をご紹介します。『深草少将(ふかくさのしょうしょう)』という男が、超美人の小野小町にプロポーズした時のお話です。

 

小野小町はモテすぎてめんどくさかったのか、彼にこんなムリ難題を突きつけました。
「私のところに、夜中に100日間、毎日休まず通い続けたら、結婚してあげてもいいわよ」

 

今なら「徒歩で毎日うちの家まで来い。100日間な」という、超ブラックな条件です。しかし、少将はとてもとても真面目でした。「100日通えば小町と結婚できる!」と大喜び。毎日毎日、雨の日も風の日も、何キロもある道を歩いて彼女の家へと通いつめます。

 

小町は「通った証拠」として、彼が来るたびに木の実を1個ずつ数えていきました。

1日、2日、50日、90日……。少将のガッツはすさまじく、ついに99日目までクリアします。あと1日でゴール、明日になれば小町は俺の奥さんだ!

 

そして運命の100日目の夜。

なんと、その日は歴史に残るような大吹雪でした。しかし少将は「ここであきらめたら男がすたる!」と、猛吹雪の中をはうようにして小町の家へ向かいます。

 

 

……が、あともう少しというところで、寒さと疲れで、道の途中で力尽きて亡くなってしまいました。

あと1回で満タンになるポイントカードを握りしめたまま、ゴール直前でゲームオーバー。悲しいお話として有名ですが、今の感覚で見ると「いや、最後の1日くらい牛車(今でいうタクシー)使いなよ!」「小町も99日まで来たら、さすがに最後の日は家に入れてあげなよ!」と、どっちの頑固さにもツッコミを入れたくなる切なすぎるお話です。

 

 

最後は、あの『源氏物語』を書いた紫式部の日記に、バッチリ実名でさらされている、エリート貴族・藤原実資(ふじわらのさねすけ。一昨年の大河ドラマではロバートの秋山さんが演じていました)のやらかしです。

 

ある夜、実資は好きな女性の部屋の前に忍び込みました。平安時代のプロポーズ作戦です。

彼は、ただ声をかけるだけではつまらないと考えました。「大人の男のカッコよさと、頭の良さをアピールしたい」と考えた彼が選んだBGM、それが「お経」でした。

 

彼は女性の部屋のすぐ外に立ち、暗闇の中で、いい声でお経をブツブツと唱え始めたのです。

 

想像してみてください。夜中、自分の部屋のすぐ外で、男がエンドレスでお経を唱えている恐怖を。

ロマンチックどころか、完全に「おばけが出たからお祓いしているシーン」です。

 

部屋の中にいた女性たちは、怖すぎて布団をかぶってガタガタ震え、完全に無視を決め込みました。実資は「おや、僕のいい声に聞き惚れて言葉も出ないのかな?」と勘違いし、一晩中お経を唱えます。朝になると「ふっ、大人の魅力を見せつけてやったぜ」と満足そうに帰っていきました。

 

次の日、宮殿の中は「昨日、実資が部屋の前で呪いを唱えていた」というウワサで持ちきりになり、彼はしばらく女性たちから嫌われるハメになりました。良かれと思ったアプローチが、一瞬で「怪奇現象」に変わった瞬間です。

 

 

いかがだったでしょうか。
千年前のイケメンエリートたちも、恋愛となるとみんなと同じようにとんでもない行動に出て、見事にフラれています。

 

彼らが残した百人一首のカッコいい和歌や美しい日記の裏には、こうした数々の「黒歴史」が隠されているのです。

そう考えると、学校の授業で習うむずかしい古文の文章も、なんだか「必死にがんばってたんだな……」と、急に親近感がわいてきませんか?

 

もし周りに「古典ってつまんない」と言っている友達がいたら、ぜひこの「炭火を送った不審者」や「夜中にお経を唱えたホラー男」の話を教えてあげてください。きっと、次の古文の授業が少しだけ楽しみになるはずです。

2026.05.27 | 神丘教室

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